母子分離不安


ある程度の分離不安は正常な反応で、ほぼすべての小児(特に幼児)で起こります。小児は愛着を持っている相手が自分の下から去って行く時に分離不安を感じます。このような不安は一般的に、その人は戻ってくるということを小児が学習すると治まります。
3歳以降に起きる母子分離不安は、母親がいなくなってしまうのではという極度な不安や家以外での心配事などがある際に、母親に安心感を求めようとし離れられなくなることを言います。
母子分離不安も不登校の一因になっていることがあります。

まずは知ることからはじめましょう。

母子分離不安による行動例

何度も抱っこを要求してずっとしがみつく
常に膝の上に乗りたがる
年齢に合わない過度なスキンシップを求める
着替えやお風呂など一人でしていたことができなくなる
母親が一人で出かけるのを嫌がる
父親や兄弟を敵視する
寝つきに時間がかかったり、何度も目を覚ます
人見知り・場所見知りがある
登園・登校時の別れぎわ、泣いてなかなか離れない
電気を消すのを嫌がったり暗い部屋に一人で行けない
行きしぶりがある
一人での留守番を非常に怖がる
自分の思い通りにならないと癇癪を起こす

母子分離不安が強くなると体にも症状が出てきます
頭痛・腹痛・吐き気・食欲不振・めまい・夜尿・頻脈など
母子分離不安が4週間以上続く際には、医師をはじめとした専門家の治療を要する分離不安症の疑いも出てきます。

私の息子は幼稚園の頃から登園時の別れぎわ、泣いて嫌がるのを無理矢理先生に引き離してもらっていました。今思えば、環境が変わる度に大きなストレスを抱え母子分離不安を繰り返していたのだと思います。
そうとは知らない私は息子の行動に疲弊し「もっと強くなりなさい」と言葉をかけ続けていました。
それと同時に【きっと、困ることがあるともっと行けなくなる】そんな思いから、困らないように先回りして、息子の気持ちをを代弁してきました。

小学2年生で登校を行きしぶった時にも、無理矢理学校へ連れて行き「あなたが行かないと色んな人に迷惑をかける。ママは毎日謝ってばっかり。もっと強くなって」と毎朝、毎朝言葉をかけ続け、私の気持ちが分かってくれたら頑張ってくれるんじゃないか…と自分の気持ちを押し付けていました。

行けるようになるどころか母子分離不安はさらに悪化し、仕事に行く時にはしがみついて泣き叫び、主人に抑えてもらってようやく出勤。帰宅と共にしがみつき、抱っこをして離れない。お風呂も着替えも一人で出来なくなり、思いを伝えられず癇癪もひどくなり、食べない、笑わない、悪夢で何度も目が覚める。そんな毎日を過ごしてきました。

しばらくすると、身体症状も現れ、胸が痛い、お腹が痛いと訴えるようになりました。
心療内科の受診はまだまだ先でしたので、小児科を受診しました。
小児科で診断されたのは、便秘と肋間神経痛。看護師さんと泣き叫ぶ息子を押さえ付け浣腸したことは苦しい思い出として生涯残ると思います。

息子がそんな状態でも仕事を辞める選択をしなかったのは、きっと息子から離れる時間が欲しかったのだと思います。子どもが可哀想、もっと早く向き合って…そう思われる方もいらっしゃるかと思います。そうすればもう少し早く解決できたかもしれませんが、あの時の私には向き合う覚悟もできていませんでした。

そして元気になった今、気づいたんです。向き合う覚悟ができていないときに『子どものために』と思って退職していたら共倒れになっていたなって。息子が可哀想だったのはもちろん間違いない。でも私だって可哀想じゃん!いつ解決するか分からない中で暗い顔した息子にずっと抱きつかれて2人きりなんて。『母だから頑張らないと』じゃないんです。自分のことも、もっともっとも~っと大事にしていいんです。そして子どもも元気のない親と一緒にいたい訳ではないんですよ。お母さんが笑わないのは自分のせいだと罪悪感を感じてしまうので。

息子と向き合う覚悟ができたら自然と退職を選んでいました。

今、お子さんのために退職をした方がいいのかな…と悩まれている方がいらっしゃったらお子さんのために…ではなく自分がどうしたいかで選択してくださいね。
仕事から帰ってきた時「不安だったのに頑張ってくれたね。○○のおかげでママも頑張ってこれたよ。ありがとう。」と目を合わせて優しい言葉で伝えてください。
「ごめんね。」より「ありがとう。」の方がプラスのイメージとして伝わります。焦らず根気よく。

母子分離不安は強烈な不安の中にいます。
その不安と一人で闘っていると早く気づいていたら、もう少し違う言葉がかけれたのではないか…と後悔しています。戻りたいな~、やり直したいな~、今度は傷つけないように魔法のシャワーをたっぷりかけてあげたいな~。
それが出来ないと分かっているので苦しかった経験を学びに変えて今を大切に生きています。




さて、母子分離不安について分かったぞ~、となった時、後はどう対応するか…ですよね。
まずは、自分の対応を振り返ることから始めましょう。





私の息子は完璧主義です。そして負けず嫌いです。うまく行かないと泣く。完璧にできないものはチャレンジしない。
私はそこを変えようとしました。「もう少しチャレンジしてみたら?失敗の経験も大事なことだよ。嫌なことから逃げたらずっとそのままだよ。」そう声をかけて。
そして、失敗して泣かないように「宿題やった?」「明日の準備した?」と気を配り…

矛盾に気づきましたか?
チャレンジって分かりやすいものだけでなく、日々の生活に含まれているのです。自分で考えて行動すること、失敗から学んで成長すること。毎日がチャレンジで学びと成長の連続なのです。
ところが、私が「うちの子ってこういう子」と思い込んだことでで日々のチャレンジを奪い、彼の経験泥棒をしていたのです。
泣かないように先回りするのではなく、失敗で泣いたときに、その感情に寄り添う、そして頑張ったことを褒める、その小さな積み重ねが自信へと繋がり、1人で考えるようになっていきます。

分離不安の子どもたちは不安やストレスを抱えやすいという特性と合わせて、感情を表現することが苦手という場合も多いです。
「嫌だ」ということをうまく表現できず癇癪として爆発することもよくあります。

子どもは大好きなママには自分の気持ちを分かって欲しい。理解して欲しいと願っています。
自分でもどうしたらこの状態から出られるのか分からず苦しんでいます。
「何が嫌なの」「自分の気持ち話さないと分からないでしょ」と話すことを無理強いすると自分の思いを整理することもできなくなります。
そして、理解してもらえないことで親に益々話せない、自己否定していき負のスパイラルに突入していきます。


そうならないように家族の方ができること。



1.自分の気持ちは一度横に置きましょう
子どもが癇癪を起こした時に大人の意見で問題解決しようとするのはNGです。
自分の気持ちも分かって!という期待の方が強いので益々子どもを苦しめます。自分の感情解釈は少し箱の中にしまいましょう。

2.子どもの気持ちを受け入れる
「そのままでいい」「話したくなければ無理に話さなくていい」今の気持ちをありのまま受容しましょう。ALL OK!

3.何を感じているか理解する
何を考えているかと思いを巡らせても、理解できないことが多いです。そして、違うことを代弁すると、余計に癇癪が酷くなる場合があります。大事なことは何を考えているかではなく、何を感じているかです。感情なら理解してあげられる気がしませんか?

「怒りたいくらい苦しかったんだね」「悲しかったね」とお母さんが言葉で感情を代弁してあげてください。お母さんが分かってくれていると思うと次第に話す言葉も増えてきます。

4.共感する
子どもの話をとにかく聞く。そして「そうだよねー。」と共感する。
子どもが気持ちを吐き出す。ここが大事です!

私はここができていなかった…
ま、できてないのはここだけじゃないんですけど…
自分の意見と違うと「おい、おい、本当にそれでいいのかい?」と思ってしまうんですよね~
でも、失敗するのも大事なこと。この失敗から得た経験の数々が10年後に生かされていくと思って言いたいことを飲み込んでいます。

重要なのは失敗しないことではなくて、失敗を強みに変えて行くこと!失敗の数々を強みに変える。ここが親の腕の見せ所!なんです。

5.自分で決める体験をたっぷりさせる
お母さん大好きな子どもは何でもママに聞きます。

「何すればいい?」「ママどうすればいい?」
聞かれるので素直な私はすぐに答えます。そしてこれが母子分離不安を強くさてたなんて思いもせず…

ここ伸びるチャンスなんですね。
「あなたはどう思う?」この一言があるかないかで大きく変わります。
子ども)「わからない」
親)「そっか~。わからないか(4の共感はさみます)ママもわからないんだよね。どうしたらいいか一緒に考えてみようか」
子ども)「こうしてみようかな…」
母の心の中)出した答えが自分とは違う。あ~このままじゃ失敗して泣いちゃうよ~。立ち直れなくなっちゃう…

はい。ここポイントです。
先回りして困難を避けさせるのが親の仕事ではなく、子どもを信じてみないふりするのが親の仕事です。そして失敗して落ち込んだ時が親の腕の見せ所。

ようやく親が登場するのはここなんです!
落ち込んだり、泣いた時は泣き止むまでそっと寄り添う。落ち着いたら「悲しかったね」「悔しかったね」と感情に共感して「ママはそんな経験をした○○を誇りに思うよ」と頑張って切り替えたお子さんをねぎらってください。そして自分のことも「頑張ったな、私」って大いに褒めてくださいね。

そんな小さな『決める』を繰り返していると自然と自分で決めることが普通になってきます。

自分で決めることは自信に繋がっていきます。

焦らず足元にある小さな『決める』を繰り返し、もうママがいなくても大丈夫!そんな風にお子さんが感じていけるように見守っていきましょうね。



子ども信頼し、学校へ行けないこと、勉強しないこと、思い通りに行かなくて癇癪を起こすこと、甘えん坊なこと、すべて認めて「ありのまま」のお子さんを受け入れてください。

ありのままを受け入れるって頭で理解していても実際難しいですよね。
まずは自分のことを受け入れることから始めませんか?
いい加減子どもから離れたい。
もう母辞めたい。しんどい。
自分の時間が欲しい。1人になりたい
もっと、もっと浮かんできますよね。
本当に苦しいんですもの。罪悪感を感じる必要はありません。

どんな自分でも「ありのまま」受け入れてください。自分のありのままを受け入れられた時、自然とお子さんのことも受け入れられるようになります。
ありのまま、ありのままうるさいと思いますが親子で自己肯定感爆上がりしてきますから。
1人じゃ無理~と思ったら一緒にやりましょう!

母子分離不安は家族の関わり方、声掛けの仕方を変えることで改善していきます。
不登校になりやすい親の特徴を読んで自分に当てはまる項目を見つけたらそこを振り返ってみるのもいいですし、ネットで調べて自分に合った方法を探すのもありですね。

個別カウンセラーや同じ思いをしているご家族の方とのグループワーク等々…やりたい方法があればお気軽にご相談ください。
自分で合った方法で解決に向うよう願っています。

1日も早くご家族が笑顔で過ごせますように。

最後に例題入れておきますね。
考える。これも大事なことです。繰り返し考えることで声掛けのコツが掴めてきますよ!
例題1
子ども)「学校行きたくない」
例題2
子ども)「あ~、宿題嫌だな~」

ご自身が今まで返してきた言葉を思い返してください。
次は子どもをありのまま受け入れて信頼したらどんな言葉に変化していくか注目してみてください。
自分が言われたと想像してみた時、どちらの言われ方が嬉しいでしょう?
答えは入れません。
答えが入っていると考えないで読む。そして読んだ時は「なるほど~」と思うのですがすぐに忘れてしまうので。
答え合わせしたい方はお気軽にメッセージしてください。学びをアウトプットすることもとても大事なことなのです。